第1章わたくしの幼少期の素描②

生まれて間もなく、わたくしは柔らかなタパ布に包まれ、別の首長の家に連れて行かれ、そこで Konia(コニア)と Paki(パキ)に養女として迎えられました。
その娘 Bernice Pauahi(バーニス・パウアヒ)はのちの Mrs. Bishop(ビショップ夫人)であり、わたくしの養姉でございます。
わたくしにとって父母といえば養父母のみで、生みの親には興味こそありましたが、他人のように礼儀正しく接しておりました。
両親には十人の子がいましたが、多くが他家に養子として迎えられ、わたくしたちは血のつながりを感じさせぬまま幼少期を過ごしました。
これは古来の習慣で、首長同士の結びつきを強め、のちには一般の人々にも広まり、共同体の調和を支えるものでございました。
四歳になると Royal School(ロイヤル・スクール)に入りました。
王位継承資格のある子供だけが通える学校で、Mr. Amos S. Cooke(クック氏)夫妻が運営しておりました。寄宿制で、休暇や日曜日には家に戻ることができました。
家庭的な雰囲気があり、特に英語の正しい使い方には厳しく教育されましたが、空腹で眠りについた夜も多くございました。
夕食は糖蜜をかけたパン一切れだけで、料理人に食べ物をねだったり、手の届く物をこっそり取ったりしたこともございます。
最後には庭の根菜や葉を探し、棒で火を起こし、隠れて調理して食べるほどでした。
初めて学校に行った日、わたくしは Kaikai(カイカイ)という大柄な女性の肩に担がれておりました。彼女は Governor Kanoa(カノア知事)の妹で、やや低い身分ながら名のある家系でございます。
学校の入口で降ろされた時、わたくしは恐ろしくて泣き、Kaikai にしがみつきましたが、子供たちが集まってきてくれたおかげで次第に落ち着き、すぐに友だちと打ち解けました。
学校にはのちに歴史に名を残す多くの子供がいました。
Kamehameha 1(カメハメハ大王)の娘 Kinau(キナウ)の子 Moses(モーセ)、Lot(ロット)、Liholiho(リホリホ)、Victoria(ヴィクトリア)をはじめ、Lunalilo(ルナリロ)、Bernice Pauahi(バーニス)、Kaliokalani(カリオカラニ)、Kalakaua(カラカウア)、わたくし自身などでございます。
また Emma Rooke(エマ)、Peter Kaeo(ピーター)、Jane Loeau(ジェーン)、Elizabeth Kaaniau(エリザベス)、Abigail Maheha(アビゲイル)、Mary Paaina(メアリー)、John Kinau Pitt(ジョン)らも時期は異なりますが在籍しておりました。
Sunday(安息日)には Mr. Cooke(クック氏)夫妻の引率で行列を作り、王の席の近くに着席しました。年長者が先頭に立ち、男女が一列になって歩きました。
わたくしは Princess Victoria(ヴィクトリア)と深いご縁で結ばれておりました。
わたくしが養家に迎えられて二か月ほどのち、Kinau(キナウ)に Princess Victoria(ヴィクトリア)が生まれました。
Kinau(キナウ)は授乳の際、わたくしを抱き、自分の娘を乳母に預けるほどで、彼女は「この子と Victoria は生涯固く結ばれる」と宣言されました。
その言葉は Kinau(キナウ)亡き後も忘れられることなく、わたくしと Victoria(ヴィクトリア)の少女時代を貫く絆となりました。
1847年には Moses(モーセ)が学校を去り、翌1848年には Jane(ジェーン)が結婚し、Abigail(アビゲイル)も Princess Kekauonohi(ケカウノヒ)のもとへ移りました。
ちょうどその頃、はしかが流行し、Moses Kekuaiwa(モーセ)、William Pitt Leleiohoku(ウィリアム)、そしてわたくしの幼い妹 Kaiminaauao(カイミナアウアオ)が亡くなりました。妹は Kamehameha 3(カメハメハ3世)と Kalama(カラマ)王妃の養女でございました。
三人は同じ日に埋葬され、妹の棺は他の棺の上に置かれました。墓所は現在の Iolani Palace(イオラニ宮殿)の敷地にあり、のちに Nuʻuanu(ヌウアヌ)の墓所へ改葬されました。
1848年以降、Royal School(ロイヤル・スクール)は影響力を失い、閉校となりました。
Mr. Cooke(クック氏)は Mr. Castle(キャッスル氏)と商業活動を始め、Castle & Cooke(キャッスル&クック)を設立しました。この会社は現在では大きな企業となり、その後継者によって続けられております。
その後、わたくしは Rev. Mr. Beckwith(ベックウィス氏)の学校へ通うこととなり、寄宿制よりも自分に合っていると感じました。
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